がんの悩み電話相談室 会報vol.5


平成13(2001)年12月

*「電話相談の無くなる日」

がんの悩み電話相談室 室長 永瀬正己

 二一世紀がテロと戦争で始まるとは思いもかけませんでした。九月一一日米国ニューヨークに於ける同時多発テロ事件の直後三日間に、米国民の三四%が胸に星条旗をつけ家に国旗を飾った由、更に一〇人に一人が献血に行ったとのことでした。  多民族国家といわれる米国民の国と国民に対する想いは、随分と我々と異なっていると実感せざるを得ません。欧米を中心に大きく拡がった人権尊重の考え方によるインフォームド・コンセントの考え方はやかましく主張されてきましたが、がんの悩み電話相談がまだまだ存続する一番大きな理由は、やはり医師と患者間の関係が旧態依然としていて納得のいく説明が十分に行なわれていないせいではありますまいか。表現のことばは色々でしょうが、「真実を告げ」てがんと対応し家族と共に生きること、如何に安らかに死んでいくかについて、逃げないで考えていく姿勢が現場の医療者に求められると思います。本人には知らせたくない家族とも幾度も話し合うべきだと思います。
 生きがい療法、目的達成の喜びによる効果、音楽療法、家族同様のペットを同伴した入院など等、様々な治療効果のあがる事実も報告されています。宗教観の確立している人だけでなく、我々一般の日本人も更に生と死に対する想いを進めていくことが大切だと思います。  目標は、悩みの電話相談などが不要になる日が早く来て欲しいことです。


 がんの悩み電話相談室は平成八年九月に開設し、電話相談事業、ボランティア養成講座事業を年々内容の充実に努めながら五年間継続実施してきました。がんの患者と家族のためのクラブ「並木ひろば」も平成一一年二月に開設し継続実施しています。このような事業を通して患者さんやご家族の不安や悩みを受け留めることができ、自ら治療の方法や場を選択できるように事業を継続したいと思います。ご賛同いただいた会員の皆様ありがとうございました。




●がんの悩み電話相談室総会 平成一三年四月二一日に開催し、平成一二年度事業・会計報告、平成一三年度事業計画・予算などが審議され承認されました。

●がんの悩み電話相談事業 電話相談は、平成八年九月開設以来毎週土曜日午後二〜五時の三時間実施しています。相談員は、当室実施の「電話相談ボランティア講座」修了者、医師、保健婦、看護婦、ソーシャルワーカーなど二六名が交代で担当しています。 相談件数は平成八年九月開設以来平成一三年一一月末までで総計三七四件、利用は増加傾向にあります。相談内容の分析は平成一三年三月末で別表のとおりです。

●教育研修部会事業
《電話相談員の研修》
月一回二時間程度の定例勉強会を行ない、「聴き方について」「がんの各論」などについて研修すると共に、関係機関の実施するがん関係の講座・講演および当室実施の「ホスピスボランティア養成講座おかやま」などにも参加し、相談員としての資質向上に努めています。 また、今年度は相談員三名が「英国の緩和ケアの現状とそれをとり巻くサポートのあり方の視察・研修を目的とする訪英団」(主催/かとう内科並木通り病院並木基金)に参加し、同地のスタッフと意見を交換するなど、電話相談の意義、位置付け、相談員としてのあり方などに多大の研修成果をあげました。

《一般の方々対象の研修》
「ホスピスボランティア養成講座おかやま」基礎講座第X期(表1)を開催し、がんの正しい知識やよりよい終末期医療・看護・介護のあり方などの内容で実施しました。
受講者七一名、修了者六三名(受講者数が減少しており、広報のあり方を感じています)

《基礎講座修了者対象の研修》
「電話相談ボランティア講座」(表2)を開催して四名が受講し、一一月一七日修了式を迎えました。この内二名が「電話相談員」として応募し、当室教育研修部の審査を経て活動の予定です。

●がんの患者と家族のためのクラブ「並木ひろば」
本年八月から、第三土曜日が例会となりました。会員同士のすれ違いを少なくする方法として軌道にのってきています。それ以外の土曜日もいつもコーヒーが用意されていて、楽しく会話が弾むときもあり、メリハリのついた運営になってきています。このところ、六〇〜七〇歳の男性会員が四名入会され、新しい風が吹いてきています。例会では、会員の病気についての体験を話していただき、それぞれの気持ちを分かち合ったり、同じ病気をかかえていても、それぞれの状況や考えに違いがあることも学び合いました。一一月には、曹源寺修行僧の道顕さんからお話をしていただいたりしています。
私たちのクラブのような活動があちこちにでき始めているようで、運営についての問い合わせがあったり、署名の依頼があったりしています。アットホームなあたたかい雰囲気を大切にしながら、多くの全国のクラブの方々との交流や情報交換も今後の課題になるかもしれません。家族や遺族の相談もときどきあり、グループでの交流よりも個別の相談が必要な方が多く、そういった方々の相談場所が少ないことの現れかもしれません。クラブとしての課題はたくさんありますが、今後ともよろしくご協力をおねがいします。



《英国視察研修に参加して》
「心にエネルギーをもらった旅」


徳永千栄子

 がんの悩み電話相談室の相談員となり四年をむかえようとしています。一年間のホスピスボランティア養成講座を卒業して、ボランティアをすること、その人のために何かをしてあげることが私にできるのかしらと大きなプレッシャーがありました。 今年六月、かとう内科並木通り病院訪英団にがんの悩み電話相談室相談員として参加させていただく機会を得ました。事前研修を経て訪問したセントオズワルズ・ホスピスやイアン・レーニー在宅ホスピスそしてロンドン大学緩和ケアセンターで、たくさんのボランティアの人達とふれあい、話を聞く中で多くの気付きが私の心のエネルギーとなりました。

 英国では、ボランティアの年代は一六歳から七〇歳位の高齢の方まで幅広いものがありました。子供達は小さい頃から当たり前のように、人とのふれあいの中で自分たちにできることをする。仕事を退職した高齢者の中には、人とふれあい語らう中で第二の生きる楽しみを見つける人もおられました。さまざまな人がさまざまな理由でボランティアをする、それが英国のボランティアのすばらしさであろうと感動しました。

 その人のために何かができることがボランティアではない、自分にできることをする、そこには利益や報酬、そして期待など存在しないのだと痛感しました。それ以来、人とふれあう中で、私はその人のために何ができるかではなく、その人の想いや行動を、そのまま素直に受けとめることが大切であることを改めて再確認し、大きなプレッシャーから抜け出すことができました。
 看護婦である私は、悩みや相談を受けることがあります。そんな時、以前はその人のためにどう言ってあげることがベストなのかを考え、何か答を出さなくっちゃ、と聞いていたものです。また、母である時の私は、子供達のすることに、こうあるべきではないか、この方がよいのではないかと思い、関わっていたように思います。期待通りでないと、腹を立てたり落ち込んだり、情けない思いをしたり、ひとり空回りすることがありました。

 この英国視察訪問を終えて、たくさんのふれあいの中で、あたたかいエネルギーをもらった私の心は今、気球のごとく、ゆらゆら揺れながら、風の吹くままに飛ぶことができるようになりました(ちょっと大げさかな?)。

 がんの悩み電話相談を受けるときも、以前は、共感をもって聴くこと、判断をしないこと、忍耐で待つことが大切等々、自分に言い聞かせながら肩に力が入っていました。しかし最近は、静かにその人の想いが聴けるようになりました。

 先日、がんの悩み電話相談員の先輩の方に「最近、徳永さん変わったね」と言われました。「どんなふうに?」と聞き返すと、「普通、悪い方に変わったら言わないものですよ」と言われました。「そうか!」と思って、とても嬉しい気持ちになりました。

 たくさんの人とふれあい、さまざまな人との関わりの中で、私は成長させていただいているなあと思う今日この頃です。

 最後に、綿密に組まれたスケジュールによる訪英研修の機会を与えて下さった加藤恒夫先生、応援して下さった相談室の皆さん、そして助成くださった並木基金にお礼申し上げます。



*がんの悩み電話相談室 平成一四年度事業計画
●がんの悩み電話相談室 平成一四年度事業計画●総会/平成一四年四月二〇日、ホスピスボランティア養成講座おかやま「基礎講座」第四回終了後。●電話相談事業/毎週土曜日一四時〜一七時(祝祭日は休み)。●ホスピスボランティア養成講座おかやま事業/第VI期、平成一四年一月から開催(日程は左表)。●がんの患者と家族のためのクラブ「並木ひろば」/毎週土曜日一三時三〇分〜一五時三〇分(第五土曜日を除く)。●電話相談員の教育研修/毎月一回「聴き方」「がん各論」など二時間を開催。

*「会員募集・寄付金募集」
がんの悩み電話相談室は、本会の趣旨に賛同された個人および団体の年会費と寄付金で運営しています。会員は随時募集しています。また寄付金も随時承っています。
【年会費】
正会員A 10,000円
正会員B 5,000円
正会員C 2,000円
賛助会員 1口20,000円

【郵便振替口座】
01290ミ2ミ10376
(がんの悩み電話相談室)

◇◇◇ 本会の趣旨に賛同し、事業運営を担当しているメンバー(順不同)◇◇◇
永瀬正己(永瀬内科医師) 下妻晃二郎(日医総研医師) 徳永千栄子(看護婦) 福岡英明(乾内科医院医師) 斎藤信也(岡山大学外科医師) 北  徳(大学職員) 田中紀章(岡山大学外科医師) 伊藤俊雄(光生病院内科医師) 土井利勝(会社員) 木村秀幸(岡山済生会総合病院緩和ケア医師) 大橋輝久(岡山赤十字病院泌尿器科医師) 竹久寛子(かとう内科並木通り病院MSW) 堀井茂男(慈圭病院精神科医師) 山本 力(岡山大学教育学部) 横山幸生(かとう内科並木通り病院MSW) 赤木清美(保健婦) 皿海二子(玉野市保健婦) 伊藤恭子(事務局担当) 津田敏秀(岡山大学衛生学医師) 額田征子(看護婦) 北 昭子(事務局担当) 加藤恒夫(かとう内科並木通り病院医師) 橋本眞紀(保健婦) 北村吉宏(岡山療護センター精神科医師) 大野幸恵(看護婦)



*「事務局だより」
「がんの悩み電話相談室会報」第五号をお届けします。 当室は平成八年九月二八日、この事業に深いご理解を頂いた永瀬正己先生を室長にお迎えして開設し、多くの会員のご支援と当室教育研修委員の方々の専門的ご指導により、紙面に掲載しましたとおりの事業を継続し五年が経過しました。
今年度は「赤い羽根ボランティア・NPO育成支援事業」の助成やオートバックス共済会からの賛助会員の申し込みなど、少しずつご賛同の輪が広がっているように思います。
電話相談の件数も増加しています。山陽新聞が相談日を毎週紹介してくださることが大きな要因だと思っております。ますます相談員の資質を高める努力を重ね、電話をかけてよかったと思ってもらえるような豊かな対応ができるようにしたいと思います。幸い今年度は電話相談員三名が英国のホスピスの現状視察などに参加でき視野を広める機会がもてました。
がんの患者と家族のためのクラブ「並木ひろば」に集まっての語らい分かち合いなど、参加者各々の思いを少しでも遂げる場になればと思います。
「ホスピスボランティア養成講座おかやま」も内容充実をはかり継続したいと思っています。
事業運営・事務局担当に新メンバーが加わり、ホームページの開設など情報の提供や事業をより豊かにしていきたいと思います。このように事業を継続し報告できますことに対し、ご支援いただいた皆様に心からお礼申しあげます。ありがとうございました。
(二〇〇一年一二月 赤木記)